【職人インタビュー】ハートtoハート(伝統手描き家紋・鹿島紋章工芸)

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(写真:紋上絵師・鹿島 敏雄さん/工房にて)

京の手習ひでは、京都の伝統工芸について知っていただく新たな試みとして、職人インタビューをお届けします。
記念すべき第1回は、伝統手描き家紋の鹿島紋章工芸にお邪魔しました。

伝統工芸士・紋上絵師の鹿島さんは、すでに工房をご自身の代までで閉鎖すると決められ、現在は紋章工芸の技術をひとりでも多くの方に見て、知っていただくために活動されています。
時には工房近くの二条城まで出向き観光客に声をかけ、工房に案内します。

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(写真:鹿島紋章工芸外観)

紋章工芸・手書き家紋とは

平安時代に生まれたとされる家紋文化は、戦国時代には武家を中心にすっかり定着していました。
最近では自分の家の家紋を知らない方もいらっしゃいますが、実際にはほとんどすべての家に家紋が存在しています。
家紋は着物をはじめ、赤ん坊の産着や嫁入り道具、ちょっとした小物にもあしらわれ、活用されてきました。
その家紋を、手仕事で着物に描いたものが手描き家紋であり、この工程を担当するのが紋章工芸・紋上絵師です。

紋上絵師の仕事

京都特有の分業制の中で、紋上絵師の仕事は染屋の後、最終工程である仕立ての前に行われます。
染屋から上がってきた生地は、紋を書き込む部分だけが白く抜けています。
紋上絵師はここに墨で家紋を描いていくのです。
すべての作業が終わった最終工程。絶対に失敗は許されません。

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(写真:作業風景)

職人の技

「紋上絵師に必要なのは、じっと座って仕事をする力」と鹿島さんは語られます。
それもそのはず。通常ひとつの紋を描くのには30分を要し、黒染めの着物ともなればそれが5箇所もあるのですから、我慢強い性格でなければとてもではありませんが務まりません。
使うのは筆、直線に使用する定規、円を描くためのコンパス。特殊な道具はありません。
筆に墨を多く含ませると滲み、逆に少ないと掠れてしまうので、ギリギリを調整します。
どうしても線が掠れてしまったら、先に引いた線と全く同じラインをたどって線の濃さを均一にします。ちょっとでも位置が違うと線の太さにバラつきが出てしまう。マイクロの世界の技です。
紋上絵師によって家紋の入れられた生地は、最終工程の仕立てに回されます。

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(写真:鹿島さんの仕事道具)

職人の道に進んだきっかけ

職人だった父親の姿を見て育った鹿島さんは、高校を卒業すると自然に職人の道に進まれたそうです。
生地は表面の凹凸が激しく、ひたすら均一な線を引く練習を重ね、円を描くだけで3年かかるということです。
簡単な紋が5年。特に複雑なものになると習得までに10年。
鹿島さんは紋上絵師のコンクールで6年連続で1位を獲得し、7回目の挑戦からは辞退されたそうです。
「職人が芸術家と違うのは、才能がなくとも努力をすればなれること」と簡単なことのように語られますが、実際には長い道のりです。

紋章は練習するのですか?

分厚い紋章帳にびっしりと書かれた家紋の数々ですが、はじめての紋でも横に紋章帳を置いて割付して描くことが出来るというから驚きです。
しかも、紋章帳をそのまま写すだけでなく、割付次第で拡大、縮小も自由自在。
西洋のエンブレムだってお手のものです。

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(写真:紋章の割付方法)

いつ頃工房を自分の代で終わらせると考えられましたか?

職人の道に進んだのと同様に、工房の閉鎖も自然な流れだったそうです。
当時、紋章工芸の工房の数は減りつつあり、息子さんたちを大学に行かせると決めた時、後を継がさないことも決められたそうです。
現在、120件あった紋章工芸の工房は鹿島さんと同じくご高齢の職人が1人で切り盛りされる工房も含んで40件ほど。
ですが、鹿島さんのお弟子さんが今はご自身の工房を構えられ、元気にされています。
工房がなくなっても、伝統の技は受け継がれています。

紋章屋へのいざない

今後も紋章工芸がなくなることはないが、職人の数は今よりもずっと減ってき、紋上絵師の仕事を知る人も減っていくだろう、と考えられた鹿島さんは、最後に紋上絵師の仕事を多くの人に見てもらうための活動をはじめられました。
工房に人を招いて、目の前で紋章を描くところを解説付きで見せて下さいます。
見られながら描くのは普通より難しいし、喋りながら描くのはもっと難しいと笑う鹿島さん。
2005年10月、最初にイギリスからの訪問者がはじめられた感想ノートは2冊分。国内外を問わず訪れた人々からの言葉が写真とともに大学ノートにびっしりと埋めています。
体力的にどんどん作業が厳しくなっていく中、手が動くうちは多くの人に見てもらうことが生きがい、と活動を続けておられます。

最後に……ハートtoハート

「It’s a free!」「Look only!」。

海外の方も積極的に招いておられる鹿島さんにどこで英語を学んで来たのかお聞きすると、英会話の本を自分で買ってきて読んだ、との答え。
後は中学で学んだ英語程度だそうです。
恥ずかしいのは棚に上げて、度胸で挑んでいく、ハートtoハートなのだと鹿島さんは語ります。

今回、鹿島さんからはここでは書き尽くせない多くお話しをお聞きしました。
実際、工房に行かなければ伝えられないこともあります。
ご興味を持たれた方は、是非、鹿島さんの工房にいらしてください。

工房情報

鹿島紋章工芸

京都市中京区六角通堀川東入ル越後町194-2
※二条城より徒歩約10分
料金:無料
特典:絹製手描き家紋しおり割引(600円→500円)

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